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(9月30日更新)
高尾山の9月は、晴れた日がやや多く、雨の日(降水量10
mm以上/1日)は4日ほどでしたが、9月ひと月の降水量は
245mm(八王子市)でこの時期にしてはやや多めでした。
気温は変動がありましたが高めに推移したものの少しずつ下
がっており、下旬には上旬と比べ明らかに下がっていました。
このような気象条件のもと植物では夏から秋にかけ咲く草花
の他秋に咲く草花などが見られました。また鳥類では採餌行
動などが見られました。哺乳類についてはフィールドサインや
姿などが確認されました。両生爬虫類ではカナヘビなどが見
られました。昆虫類ではチョウ・ガ、ハチ、トンボなどが目立ち
ました。
植物では、オオヤマハコベ、マツカゼソウ、ツリフネソウ、ママ
コノシリヌグイ、シモバシラ、ノハラアザミ、トネアザミ、ノダケ、シ
ロヨメナ、ユウガギク、カノツメソウ、キンミズヒキ、ノササゲ、ヤ
マホトトギス、ノコンギク、イヌタデ、キツネノマゴ、タマアジサイ、
ヤマハギ、マルバハギなど草や樹の花などが見られました。
鳥類では、セグロセキレ、ヒヨドリ、メジロなどの採餌行動など
が見られました。
哺乳類では、テンの糞、ムササビの食痕、アナグマの姿など
が確認されました。
両生類爬虫類では、ニホンカナヘビの幼体などが見られまし
た。
昆虫類では、モンキアゲハ、スジグロシロチョウ、アカタテハ、
ツマグロヒョウモン、ダイミョウセセリ、ウラナミシジミ、シロオビ
クロナミシャク、ヒトツメカギバ、クマバチ、オオスズメバチ、ヒメ
スズメバチ、ヤマトツヤハナバチ、ハラナガツチバチの一種、
マユタテアカネ、ハグロトンボ、オニヤンマ、アキアカネ、ハンミ
ョウ、クロカナブン、カナブン、カマドウマ、オオゴキブリなどが確
認されました。
・鳥類(主なもの)
留鳥 | ヤマガラ、シジュウカラ、エナガ、メジロ、コゲラ、イカル、ウグイス、セグロセキレイ、ヒヨドリ、キジバト、アオバト、アオサギ、ハシブトガラスなど |
夏鳥 | クロツグミ、キビタキなど |
分布を広げいる鳥? | リュウキュウサンショウクイなど |
かごぬけしたり、放鳥されたものが野生化した鳥 | ガビチョウ、ソウシチョウなど |
9月は、それ以前と異なり森は静かになってきましたが、クロツグ
ミ、キビタキ、アオバズクなどの鳴き声がまだ聞かれました。また秋
は実りの季節ですが、セグロセキレイ、ヒヨドリ、メジロなどの採餌
行動などが見られました。
セグロセキレイの若鳥が、下旬に麓の川の流れで何かを嘴でつ
かみました。写真で見ると、ガガンボのようなものが嘴に入ってい
ました。
ヒヨドリが、下旬にミズキに来て騒がしくしていましたが、すぐに飛
去しました。ミズキには多数の実が見られましたが、この株は白っ
ぽい実が多く未熟の実が多いようでした。今年はミズキの熟化が遅
れましたが、株によっては黒っぽい実など熟した実を多数つけてい
るものが見られました。ヒヨドリの飛来したミズキは未熟の実が多か
ったため、ヒヨドリはそれを知ってすぐに飛去したのかもしれません。
メジロが、下旬に高尾山頂付近にあるカキノキの実をつついてい
ました。大きくなったカキの実をつついていましたが、すぐにつつくの
を止め飛去しました。カキノキの熟期は10月~11月と言われていま
すが、この夏は高温が続いたこともあり、カキノキの実はまだ熟して
いなかったかもしれません。
・哺乳類(主なもの)
姿、フィールドサインなど | テン(糞)、ムササビ(食痕)、アナグマ(姿)など |
テンの糞が、上旬に薬王院の南側、高尾山頂近辺などの遊歩道
上で見られました。薬王院の南側で見られた糞は、ため糞状態でし
たが、①エノキの核、果皮など、②節足動物の体の一部など、③マ
タタビ科の種子などが近接していました。また高尾山頂近辺にあっ
た糞は、マタタビ科の種子、果皮、エノキの核、果皮、節足動物の体
の一部などでした。
ムササビの食痕が、下旬に高尾山頂近辺の遊歩道付近で見られ
ました。コナラのどんぐりをかじった痕のある小枝、コナラのどんぐり
の果皮の一部、コナラのどんぐり(未熟)などが遊歩道やその近辺
に散乱していました。ムササビにかじられたどんぐりをよく見ると、ど
んぐりは縦に半身になっており、果皮の内側(子葉部分)はかなり食
べ残されていました。
アナグマの姿(1頭)が、下旬にケーブルカー高尾山駅南東側の尾
根付近で夜見られました。
・両生爬虫類(主なもの)
爬虫類 | ニホンカナヘビ(幼体)など |
前の沢近くの遊歩道では、ニホンカナヘビの幼体が見られ
ました。この幼体は体長7~8cmほどで、日当たりの良い遊
歩道を徘徊していました。
・昆虫類(主なもの)
飛んでいたもの | スジグロシロチョウ(成虫)、モンキアゲハ(成虫)、ツマグロヒョウモン(成虫)など |
枝や葉にいたもの | シロオビクロナミシャク(成虫)、ヒトツメカギバ(成虫)、ハンミョウ(成虫)、アキアカネ(成虫)など |
花にいたもの | ダイミョウセセリ(成虫)、ウラナミシジミ(成虫)、クマバチ(成虫)、ヤマトツヤハナバチ(成虫)、ハラナガツチバチの一種(成虫)など |
幹にいたもの | アカタテハ(成虫)、ヒメスズメバチ(成虫)、オオスズメバチ(成虫)、クロカナブン(成虫)、カナブン(成虫)など |
地面やその近くにいたもの | オオゴキブリ(成虫)、カマドウマ(成虫)など |
水面近くにいたもの | マユタテアカネ(成虫)、ハグロトンボ(成虫)、オニヤンマ(成虫)など |
9月は、雨が適度に降り、日差しも少なからずあったと思
われましたが、上の表の”枝や葉にいたもの”、”地面やそ
の近くにいたもの”などが8月に比べやや少ないように思わ
れました。もしかしたら高尾山頂近辺などの剪定や草刈り
などが影響したかもしれません。このような状況下ですが、
個々の昆虫についてはそれぞれ動きが見られました。
中旬には、麓の池でオニヤンマなどが見られました。数日
前に降った雨の影響で導水されている水が増え、池の水位
が上がっていましたが、この池にオニヤンマが1匹現れまし
た。この辺りでは普段見られないオニヤンマがこのように増
水した時に見られるのは一瞬不思議な感じがしました。
同じく中旬に、ハンミョウなどが谷筋で見られました。ハンミ
ョウは直線的な飛んだ?後葉にとまりました。じっとしている
ようで少しずつ向きを変えていました。ハンミョウの幼虫は地
面の穴に潜み、穴に近づく小動物を捕まえるそうですが、成
虫も獲物を狙っていたのでしょうか。
同じく中旬に、アキアカネが高尾山頂付近で見られました。
アカネ類が数匹飛んでいましたが、そのうち1匹が枝にとま
りました。写真を撮ると、アカネ類の胸にとがった黒い帯が
あるのが見られアキアカネであることが確認されました。8
月この辺りはウスバキトンボが飛んでいましたが、いつの間
にかアキアカネに替わってしまったのでしょうか。
・植物(主なもの)
草 | 花 | オオヤマハコベ(白色)、マツカゼソウ(白色)、シモバシラ(白色)、シラヤマギク(白色)、ヒヨドリバナ(白色)、シロヨメナ(白色)、ユウガギク(白色)、イヌショウマ(白色)、モミジガサ(白色)、カノツメソウ(白色)、ゲンノショウコ(白色)、オトコエシ(白色)、コボタンヅル(白色)、イヌトウバナ(白色)、アキカラマツ(淡黄白色)、ヤマホトトギス(白色、赤紫色の斑点)、ツリガネニンジン(淡紫色または白色)、ヤマキツネノボタン(黄色)、ダイコンソウ(黄色)、キンミズヒキ(黄色)、ノササゲ(黄色)、トキリマメ(黄色)、カラスノゴマ(黄色)、シュウブンソウ(淡黄緑色)、フジカンゾウ(淡紅色)、ママコノシリヌグイ(赤色(上部)、白色(下部))、ヌスビトハギ(淡紅色)、イヌタデ(紅色)、キツネノマゴ(淡紅紫色)、ヤブマメ(紫色、白色)、ツリフネソウ(紅紫色)、ノハラアザミ(紅紫色)、トネアザミ(紅紫色)、アズマヤマアザミ(紅紫色)、ハグロソウ(紅紫色)、ヘクソカズラ(紅紫色)、クズ(紅紫色)、ツユクサ(青色)、ノコンギク(淡青紫色)、アキノタムラソウ(青紫色)、ツリガネニンジン(淡紫色または白色)、ヤブラン(淡紫色)、ノダケ(暗紫色)など |
樹木 | 花 | 〔高木〕オオモクゲンジ(黄色)など 〔低木〕タマアジサイ(白色~帯紫色(装飾花)、紫色(両性花))、ヤマハギ(紅紫色)、マルバハギ(紫紅色)など |
9月は、雨が少なからずありましたが、高温傾向が続いたせいか、夏から
秋に咲く草花、あるいは秋に咲く草花などの開花が一部遅れているようで
す。9月下旬時点で花の見られた草や樹は下記の通りです。
谷筋で咲いていた花については、草ではオオヤマハコベ、マツカゼソウな
どが白い花をつけ、ツリフネソウなどが赤紫の花をつけていました。また樹
木では低木のタマアジサイなどが白色、紫色の2色からなる花をつけていま
した。
中腹から尾根にかけ咲いていた花は、草ではシモバシラが白い花をつけ、
ノハラアザミ、トネアザミなどが赤紫の花をつけていました。またノダケが暗
い紫色の花をつけていました。
この他に見られた草花については、シロヨメナ、ユウガギク、カノツメソウ
などが白い花をつけ、キンミズヒキ、ノササゲなどが黄色い花をつけていま
した。またヤマホトトギスが紫色の斑点のある白い花をつけ、ノコンギクが
淡い青紫色の花をつけていました。
蕾のふくらんできた10月に開花の期待される草花については、サラシナ
ショウマ、ウスゲタマブキ、オクモミジハグマ、カシワバハグマ、コウヤボウ
キなどがあります。