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(10月31日更新)
高尾山の10月は、晴れた日が少なく、曇りの日の多い一月
でした。雨の日(降水量10mm以上/1日)は少なく、降って
も10mm未満/1日の日が11日ありましたが、月雨量は59
mmほど(9/1~9/30)で少なめでした。気温は変動がありまし
たが日を追うごとに下がり、下旬には秋らしくなってきました。
このような気象条件のもと植物では秋に咲く草花が多くなりま
した。また鳥類では夏鳥や冬鳥などが確認されました。哺乳類
についてはフィールドサインや姿などが確認されました。昆虫
類ではハチ、アブなどが見られました。
植物では、シラネセンキュウ、サラシナショウマ、ツリフネソウ
、セキヤノアキチョウジ、コウヤボウキ、オクモミジハグマ、アキ
ノキリンソウ、ヤクシソウ、トネアザミ、ノハラアザミ、シロヨメナ、
ノコンギク、イヌタデ、キツネノマゴなど草花などが見られました。
鳥類では、ヤブサメ、キビタキなどの夏鳥が確認され、ゴジュ
ウカラ、ツグミなどの冬鳥が確認されました。
哺乳類では、リスの姿、テンの糞、イノシシの足跡、ウサギの
食痕などが確認されました。
昆虫類では、ウラナミシジミ、トラマルハナバチ、キンケハラナ
ガツチバチ、ヤマトツヤハナバチ、オオスズメバチ、ニホンミツ
バチ?、セスジハリバエ、ホソヒラタアブ、ハンミョウなどが確認
されました。
・鳥類(主なもの)
| 留鳥 | ヤマガラ、シジュウカラ、エナガ、メジロ、コゲラ、イカル、ウグイス、セグロセキレイ、ハクセキレイ、キセキレイ、モズ、ヒヨドリ、キジバト、アオバト、アオサギ、ダイサギ、ハシブトガラスなど |
| 夏鳥 | クロツグミ、ヤブサメ、キビタキなど |
| 冬鳥 | ゴジュウカラ、ツグミなど |
| 分布を広げいる鳥? | リュウキュウサンショウクイ、イソヒヨドリなど |
| かごぬけしたり、放鳥されたものが野生化した鳥 | ガビチョウ、ソウシチョウなど |
10月は、夏鳥の大半が越冬地へ旅立っていくと思われましたが
、残っているものが確認され、冬鳥が一部飛来したのが確認され
ました。また採餌している鳥や冬に備えての行動の変化の見られ
た鳥などが見られました。
夏鳥であるクロツグミ、ヤブサメなどが10月上旬に高尾山頂近
辺で確認され、キビタキが中旬に高尾山頂近辺で、下旬に前の沢
などで確認されました。また冬鳥であるゴジュウカラが10月中旬
に高尾山頂近辺で確認され、ツグミが下旬に高尾山頂近辺で確
認されました。10月は夏鳥と冬鳥が一月の間に確認されました
が、これは今年は暑さが続いたせいで小鳥たちの食べるミズキ
やクマノミズキなどの実の熟す時期が遅れ、夏鳥の渡りが遅れ
るとともに、大陸からの強い寒気が日本列島に早く南下したこと
などが重なり、たまたまこのようになったのでしょうか。
キジバトが2羽、10月上旬に高尾山頂近辺にあったサンショウ
の樹に来ているのが確認されました。サンショウの実は赤く色づ
いており、食べごろと思われましたが、おそらく実の中の種?を
ついばんでいたのではないかと思われました。
ソウシチョウが10月上旬に高尾山頂近辺で群れているのが見
られました。10羽位が地面近くで餌を探ししながら移動している
のが確認されました。なおソウシチョウは寒い時期以外は数羽で
行動しているのがよく見られます。
・哺乳類(主なもの)
| 姿、フィールドサインなど | リス(姿)、テン(糞)、イノシシ(足跡)、ウサギ(食痕)など |
テンの糞が、10月上旬に高尾山頂近辺の2箇所で見られ
ました。1箇所目の糞は、尾根上の遊歩道で見られ、エノキの
核、果皮、マタタビ科の植物の種子、果皮、ムカデの足、小鳥
の腰骨の一部?などでした。2箇所目の糞は、高尾山頂付近
で見られ、イヌガヤの種子、マタタビ科の植物の種子、果皮な
どでした。
ウサギの食痕が、10月中旬に前の沢で見られました。流れ
のわきのやや開けたところにあったノブキの茎や葉などが、か
じられているのが確認されました。なおウサギのかじったノブキ
の茎は、ナイフで斜めに切ったような形でした。。
・昆虫類(主なもの)など
| 枝や葉にいたもの | セスジハリバエ(成虫)など |
| 花にいたもの | ウラナミシジミ(成虫)、ホウジャクの一種(成虫)、トラマルハナバチ(成虫)、キンケハラナガツチバチ(成虫)、ヤマトツヤハナバチ(成虫)、ホソヒラタアブ(成虫)など |
| 幹にいたもの | オオスズメバチ(成虫)、ニホンミツバチ?(成虫)など |
| 地面やその近くにいたもの | ゴミムシの一種(成虫)など |
| 鳴いていたもの | アオマツムシ(成虫)、カンタン(成虫)など |
| クモの網にかかっていたもの | ハンミョウ(成虫、死体)など |
| クモ類 | ジョロウグモ(成体)、スジアカハシリグモ(成体)など |
10月は、上表の”飛んでいたもの”、”枝や葉にいたもの”
などが9月に比べやや少なくなっています。これは気温の低
下とともに行動が鈍くなる昆虫など変温動物の性質によるも
のかもしれません。個々の昆虫の動きなどについては下記
の通りです。
ハンミョウの死体が、前の沢のやや開けた場所のクモの巣
にかかって死んでいるのが上旬に見られました。このハンミ
ョウとほぼ同じ場所で、9月中旬に葉上で見られたハンミョウ
と同じ個体かどうか分かりませんが、自然界でおきている一
断面(生死(いきしに))をかいま見たようでした。
ニホンミツバチ?の巣が、前の沢にあるスギの大木にでき
て3ヶ月位立ちましたが、相変わらず働きバチは縦長の狭い
幹の裂け目のようなところから出入りを続けていました。ニホ
ンミツバチ?のたくましさを感じますが、来年の春もこのよう
な活動が見られるでしょうか。
・植物(主なもの)
| 草 | 花 | シラネセンキュウ(白色)、サラシナショウマ(白色)、オオヤマハコベ(白色)、ミヤマタニソバ(白色)、マツカゼソウ(白色)、コウヤボウキ(白色)、オクモミジハグマ(白色)、カシワバハグマ(白色)、シモバシラ(白色)、シラヤマギク(白色)、ヒヨドリバナ(白色)、シロヨメナ(白色)、ノコンギク(白色)、イヌショウマ(白色)、ゲンノショウコ(白色)、オトコエシ(白色)、ヤマホトトギス(白色、赤紫色の斑点)、アキノキリンソウ(黄色)、ヤクシソウ(黄色)、ノササゲ(黄色)、キンミズヒキ(黄色)、カラスノゴマ(黄色)、ウスゲタマブキ(黄色~褐色)、シュウブンソウ(淡黄緑色)、ヌスビトハギ(淡紅色)、ハナタデ(紅色~淡紅色)、イヌタデ(紅色)、ミズヒキ(赤色、白色)、ミゾソバ(紅紫色、白色)、キツネノマゴ(淡紅紫色)、ツリフネソウ(紅紫色)、ノハラアザミ(紅紫色)、トネアザミ(紅紫色)、アズマヤマアザミ(紅紫色)、ツユクサ(青色)、セキヤノアキチョウジ(青紫色)、ノコンギク(淡青紫色)、ヤマハッカ(青紫色)、アキノタムラソウ(青紫色)、ノダケ(暗紫色)など |
| 樹木 | 花 | 〔低木〕タマアジサイ(白色~帯紫色(装飾花)、紫色(両性花))、ヤマハギ(紅紫色)など 〔つる〕キヅタ(黄緑色)など |
| 実 | 〔高木〕オオモクゲンジ(淡紅色~淡褐色)、ミズキ(赤色、紫黒色)、クマノミズキ(紫黒色)など 〔小高木〕クサギ(赤色(がく)、藍色(果皮))、ゴンズイ(赤色(果皮)、黒色(種子))、イヌザンショウ(赤褐色(種子は黒色))など 〔低木〕サンショウ(紅色から赤褐色)、コバノガマズミ(赤色)、ガマズミ(赤色)、ミヤマシキミ(赤色)、ムラサキシキブ(淡紫色)など |
10月は、気温が上旬から下旬に向かうにつれ、変動はありましたが日を
追うごとに下がり、下旬には秋が深まったかように低下ました。10月下旬
時点の草花の開花状況や樹木の色鮮やかな実の成り具合などは下記の
通りです。
谷筋で咲いていた草花については、シラネセンキュウ、サラシナショウマ
などが白色の花をつけ、ツリフネソウなどが紅紫色の花をつけていました。
またセキヤノアキチョウジなどが青紫色の花をつけていました。
中腹から尾根にかけて咲いていた草花については、コウヤボウキ、カシ
ワバハグマなどが白色の花をつけ、アキノキリンソウ、ヤクシソウなどが黄
色の花をつけていました。またトネアザミ、ノハラアザミなどが紅紫色の花
をつけていました。
この他の草花については、シロヨメナなどが白色の花をつけ、ノコンギクな
どが淡い青紫色の花をつけ、アズマヤマアザミなどが紅紫色の花をつけて
いました。
色鮮やかな実をつけた樹木については、高木ではオオモクゲンジが淡紅
色から淡褐色の袋状の実をつけ、ミズキなどが赤色や紫黒色の丸い実を
つけていました。小高木ではクサギが赤いがくをつけた藍色の実をつけ、
ゴンズイが黒い種子の見える赤い果皮が目立っていました。低木では、サ
ンショウなどが紅色から赤褐色の実をつけ、コバノガマズミ、ガマズミ、ミヤ
マシキミなどが赤色の実をつけていました。またムラサキシキブなどが淡い
紫色の実をつけていました。